粤方言(広東語)

時間:2007-08-08 00:00作者:閲覧数:

粤語(えつご)とも言われる。広東、広西チワン族自治区、香港、澳門および華僑、華人の間で使用される。推定使用人口は8000万人である。

マレーシアにも多くの話者がおり、欧米やオセアニアの中国系社会でも主要な方言となっている。香港では、テレビ、ラジオのメディアで使われる優勢言語であり、映画、演劇、歌謡曲でも広く使われる。また、新聞、雑誌、Webサイトでも方言をつかった文章が広く書かれており、これを表記するための方言字も多く作られている。

古中国語の語彙が残存している比率が他の方言よりも高く、タイ系の基層の上に、古中国語がかぶさってできたものと考えられる。イギリスの統治を長く受け、英語を併用している香港の広東語は、英語からの借用語が多く使われる。同様に澳門の広東語には少量のポルトガル語からの借用語がある。

統語論的には、修飾辞が被修飾辞の後ろに付く。例:(「鷄公」、「椰青」、「豆腐潤」など)があることや、数詞を伴わない量詞(類別詞)で名詞を限定するなど、他の中国語の方言と異なる部分がある。(古代の中国語でも前記の逆修飾が見られる。天后武皇→武皇天后など。)

【特徴】

  1. 母音に長母音と短母音の対立、タイ語群の基層が残っている。

  2. 入声の音節末には両唇(p)、歯茎(t)、軟口蓋(k)の3種の入破音がある。また、非入声の音節末には両唇(m)、歯茎(n)、軟口蓋(ng)の3種の鼻音韻尾を持つものがあり、意味の弁別に使われている。

  3. 香港の広東語において、頭子音のnはlで、ngはゼロ子音で発音されることが多い。

  4. 中心地広州の発音では平声、上声、去声、入声が陰陽(高低)各1対と、中入声の、計9つの声調がある。また、3つの変調があるが、実際には基本的に6種類の調値を区別すればよい。