漢中王設壇処

概況：
漢中王設壇処（かんちゅうおう せつだんしょ）は、中国陝西省漢中市勉県の勉陽鎮旧州鋪（きゅうしゅうほ）に位置する、三国時代の重要な史跡です。後漢の建安24年（西暦219年）、蜀漢の初代皇帝となる劉備（玄徳）が、曹操との戦いである定軍山の戦いに勝利して漢中を手中に収めた後、ここで壇を築き、正式に「漢中王」を称した場所として知られています。この出来事は『三国志』や『資治通鑑』にも記録されており、劉備が皇帝となる前の権力基盤を確立した決定的な瞬間を象徴する場所です。当時は「沔陽」と呼ばれたこの地は、古代の沔陽県城の旧址でもあります。現在、劉備が実際に築いた土壇は長い歳月のうちに失われてしまいましたが、清代の光緒29年（1903年）に建立された記念碑が現存し、往事を今に伝えています。この碑には「先主初為漢中王設壇処（先主初めて漢中王と為る壇を設くるところ）」と刻まれており、劉備に対する尊称「先主」が使われている点にも歴史の重みを感じます。周辺は「興劉寨」とも呼ばれ、現在は保護壁に囲まれた静かな史跡公園として整備され、三国志ファンや歴史愛好家が訪れる隠れた名所となっています。

見所：
清代に建立された記念碑「先主初為漢中王設壇処碑」：この史跡の核心となる現存物です。高さ約1.95メートル、幅約0.9メートルの石碑で、中央に大きく「先主初為漢中王設壇処」と刻まれています。上款には「光緒癸卯仲春月」、下款には「署沔県事楊恩錫立石」とあり、1903年に当時の地方官によって建立されたことが分かります。1700年以上前の歴史的事件を、約100年前の人々が顕彰した証です。
静謐な史跡公園の雰囲気：かつての壇場は約800平方メートルの独立した院落（囲いのある区画）内にあり、南北約22.5メートル、東西約16.2メートルの広さがあります。劉備が築いた本来の土壇は1953年に平らにされてしまいましたが、現在は石で築かれた長方形の壇台が復元され、祭壇としての雰囲気を保っています。喧騒から離れた落ち着いた空間で、歴史に思いを馳せることができます。
三国志の重要な転換点を体感できる場所：ここでの「漢中王」即位は、劉備にとって覇業の重要な礎となりました。この出来事の後、劉備は魏延を漢中に残して守らせ、自身は成都に戻り、その2年後には皇帝に即位しています。まさに蜀漢建国への階段を駆け上がった記念碑的な場所と言えるでしょう。
周辺の三国史跡とセットで巡る：この設壇処は、同じ勉県にある「定軍山古戦場」や「武侯墓」（諸葛亮の墓）、「武侯祠」など、三国志ゆかりの地からそう遠くありません。これらの史跡と合わせて巡ることで、漢中争奪戦から蜀漢建国にかけての流れを、より立体的に理解することができます。

入場料：
情報によると、この史跡への入場は無料のようです。ただし、管理状況によって変更される可能性がありますので、訪問前に現地の表示を確認されることをお勧めします。汉中王设坛处(hàn zhōng wáng shè tán chǔ)常時公開されている観光施設とは異なり、管理上の理由から通常は門が閉まっている場合があります。地元の習慣として、旧暦の毎月1日と15日の早朝、地元の方がお香を上げに訪れる際に開門されることがあるようです。確実に入場を希望される場合は、勉県の文化財保護関連の部門や観光案内所に事前に確認を取ることを強くお勧めします。一般的な観光地の時間帯を参考に記載するならば以下のようになりますが、あくまで目安です。
ハイシーズン：情報なし（特別な公開日時が設定されていない可能性が高い）
ローシーズン：情報なし（特別な公開住所：
陝西省漢中市勉県勉陽鎮旧州鋪社区内（旧州鋪街中段北部）。
公共交通機関：
具体的な公共交通機関の路線情報は、提供された検索結果からは明確には分かりません。一般的なアクセス方法としては、まず漢中市街地から勉県行きの長距離バス（漢中汽車站などから）を利用し、勉県のバスターミナルで下車します。その後、勉県市内から旧州鋪地区行きのローカルバスやタクシーを利用することになるでしょう。自家用車でお越しの場合は、ナビゲーションで「勉県旧州鋪」または「刘备设坛处」を目的地に設定してください。遺跡は住宅地の中通常は門が閉まっており、自由に見学できない可能性が高いです。訪問を計画される場合は、必ず事前に勉県の文化財保護担当部門や観光局に連絡し、見学可能な日時や方法を確認してください。
旧暦の朔望日（1日、15日）の早朝を狙う方法もありますが、確実ではありません。
ここはあくまで歴史的遺跡であり、宗教施設や常設の観光公園とは性格が異なります。見学が許可された場合でも、静粛を保ち、石碑や復元壇などにむやみに触れたり、登ったりしないようお願いします。
周辺は一般的な住宅地です。地元住民の生活エリアでもありますので、駐車や写真撮影の際にはご配慮ください。
勉県一帯には、定軍山、武侯墓、武侯祠など、三国志に関連する史跡が数多くあります。
漢中王設壇処単体で訪れるよりも、これらのスポットと組み合わせて一日かけて巡るプランを立てることをお勧めします。その際は、レンタカーやタクシーをチャーターする方が移動が効率的です。
遺跡の規模はそれほど大きくなく、現存する主なものは石碑と復元された壇台です。大規模な展示施設や説明板が充実しているわけではないことを予めご了承ください。
歴史的背景を深く理解するためには、事前に三国志（特に劉備の漢中平定周辺）の知識を予習しておくと、訪問時の感慨が一層深まるでしょう。