五台山

概況：
五台山（ごだいさん）は、中国山西省北東部の忻州市五台県に位置する、文殊菩薩の霊場として知られる中国四大仏教名山の筆頭であり、世界文化遺産にも登録されている仏教聖地です。その名は、東台望海峰、西台掛月峰、南台錦繡峰、北台葉斗峰、中台翠岩峰という五つの峰頂が平坦な台地状を成していることに由来します。古来より「清涼山」とも呼ばれ、夏季の平均気温が平地より約10度低い避暑地としても歴史的に愛されてきました。宗教的には、漢伝仏教とチベット仏教（ラマ教）が共存する中国唯一の道場として発展し、北魏の時代から歴代皇帝の尊崇を集め、特に清代には皇室の行宮が置かれるなど、その文化的価値は計り知れません。山中には、北魏から清代に至る各時代の建築様式を伝える68を超える寺院と、数多くの仏塔、彫刻が現存し、「中国古代建築芸術の歴史的回廊」と称されるほどです。自然と文化が一体となったその景観は、訪れる人々に深い安らぎと畏敬の念をもたらします。

見所：
五台山のシンボル「大白塔」がある塔院寺：五台山を代表するランドマークである高さ75.3メートルの白い仏塔（釈迦牟尼舍利塔）がそびえる寺院です。この塔はネパールと中原の様式が融合した独特の形状をしており、時計回りに塔を巡る「転塔」は功徳を積む行いとされています。
五台山最古の寺院「顕通寺」：後漢の時代に創建され、「五台山第一古刹」と称される由緒正しい寺院です。木を使わず煉瓦だけで造られた「無量殿」や、10万斤の銅で造られた「銅殿」など、建築的にも非常に価値が高く、必見です。
皇室ゆかりの蔵伝仏教寺院「菩薩頂」：清代の康熙帝や乾隆帝が巡幸した黄廟（蔵伝仏教寺院）の総本山です。108段の石段を上った先にあり、漢蔵融合様式の荘厳な建築群と、頂上からの眺望が素晴らしいです。
「小朝台」の聖地「黛螺頂」：五つの台頂に祀られる五方文殊菩薩を一堂に拝むことができるため、「小朝台」と呼ばれます。1080段の急な石段「大智路」を登るか、ロープウェイを利用して訪れます。
最も香火が盛んな「五爺廟（万仏閣）」：広済龍王菩薩（五爺）を祀り、「願い事が叶う」と信じられており、五台山で最も参拝客の多い寺院です。早朝から多くの人々が列をなす光景は圧巻です。
五つの峰を巡る「大朝台」体験：東台での雲海と日の出、北台（華北最高峰）での絶景、夏の南台の花畑など、各台頂ごとに異なる自然と宗教的風景を体験できます。専用の朝台車を利用するのが一般的です。

入場料：
五台山風景名勝区の入山料は季節によって異なります。
ハイシーズン（4月1日～10月31日）：大人 145元。
ローシーズン（11月1日～3月31日）：大人 120元。
優待料金（半額）：6歳（6歳不含）～18歳（含）の未成年、全日制大学生以下の学生、60歳（含）以上の高齢者（いずれも有効な身分証明書の提示が必要）。
無料対象：6歳（含）以下または身長1.2メートル（含）以下の児童、70歳（含）以上の高齢者、障害者、現役軍人、僧侶など（有効な証明書提示）。
※上記は景区の入場料です。顕通寺、塔院寺、菩薩頂、黛螺頂など主要寺院の多くは別途小入場料（5元～15元程度）が必要です。五爺廟や殊像寺など無料の寺院もあります。五台山(wǔ tái shān)景区全体の入場可能時間は以下の通りです。
ハイシーズン（4月～10月）：6:00 ～ 20:00 （最終入場は閉門時間の30分～1時間前が目安）。
ローシーズン（11月～3月）：7:00 ～ 19:00 （同上）。
※各寺院の開門時間はこれより短く、通常は朝7時または8時から夕方17時頃までです。朝台車の運行は季節により変動し、10月から4月頃までは運休する場合があります。住所：
山西省忻州市五台県台懐鎮（五台山風景名勝区）。
公共交通機関：
飛行機：最寄りの空港は「五台山空港」ですが、便数が限られます。多くの方は「太原武宿国際空港」を利用し、空港バスで太原東客駅へ行き、そこから五台山行き長距離バスに乗り換えます（約3.5時間）。
鉄道：「五台山駅」（繁峙県砂河鎮）または「忻州駅」が最寄りです。到着後、駅前から五台山景区行きのバスに乗り換えます。
長距離バス：太原、北京、石家庄、大同などの主要都市から五台山景区への直行バスが運行されています。
景区内交通：景区内五台山は標高が高く、朝夕の気温差が激しいです。夏季でも防寒着が必要で、冬季は防寒対策を万全にしてください。歩きやすい運動靴や登山靴が必須です。
寺院は神聖な場所です。境内では静粛を保ち、仏像や法器にむやみに触れたり、許可なく写真を撮影したりしないようお願いします。服装も過度に肌を露出するものは避けましょう。
寺院では寄進（功徳箱）やロウソク・線香を購入する機会があります。小銭を多めに準備しておくと便利です。
山道や石段が多いため、特に高齢者やお子様連れの方は、無理のない行程を組み、こまめに休憩を取りましょう。黛螺頂への1080段の階段は特に急です。
「五爺廟」など人気寺院は早朝から大変混雑します。ゆったり参拝したい方は、午後を狙うか、他の寺院から巡ることをお勧めします。また、寺院によって参拝や願掛けの作法が異なる場合がありますので、事前に調べるか、現地で確認するのが良いでしょう。