孔林

概況：
孔林（こうりん）は、中国山東省済寧市曲阜市にある、孔子とその子孫の家族墓地です。正式名称を「至聖林（しせいりん）」といい、孔廟、孔府と合わせて「三孔（さんこう）」と呼ばれ、儒家文化を象徴する聖地として広く知られています。孔子が亡くなった翌年、紀元前478年に魯の哀公によって造営が始まり、その後2500年以上にわたって孔子の子孫が埋葬され続けてきた結果、現在では総面積約200万平方メートル、周囲を囲む林牆の長さは約7.25キロメートルにも及ぶ、世界で最も長い歴史を持ち、最大の面積を誇る氏族墓地となりました。林内には10万基を超える墳墓と、柏や檜など10万本以上の古木が生い茂り、静謐で厳かな雰囲気に包まれています。単なる墓地というだけでなく、歴代の皇帝や文人たちによって建立された多くの碑碣や石像が立ち並び、中国古代の墓葬制度、政治、文化、書道藝術を研究する上で極めて価値の高い場所として、1961年に全国重点文物保護単位に、1994年にはユネスコ世界遺産に登録されています。

見所：
荘厳な入口「万古長春坊」と神道：孔林の正面入口に建つ、明代に建立された巨大な石造牌坊です。六本の石柱には12体の獅子が彫刻され、「万古長春」の文字が刻まれています。ここから続く、松柏が両側に立ち並ぶ長い神道は、聖域へと導く荘厳な雰囲気をかもし出しています。
孔子の墓と「携子抱孫」の独特な配置：孔林の中心にある孔子の墓は「馬鬣封」と呼ばれる独特の形をしています。その前方には孫の孔伋（子思）の墓、東側には息子の孔鯉の墓が配置されており、これは「携子抱孫（子供を連れ、孫を抱く）」と呼ばれる古代中国の理想的で縁起の良い墓所配置とされています。墓前には明代に建立された「大成至聖文宣王墓」と刻まれた大きな石碑が立ち、訪れる人々の深い敬意を集めています。
聖水「洙水橋」と二林門：孔子がかつて講義を行ったと伝えられる「洙水」の流れに架かる石橋と、その先にある城楼風の門「二林門」（観楼）です。橋を渡り門をくぐることで、俗世界から聖域へと足を踏み入れるという、空間の転換を体感できます。
歴代の名家の墓碑が集まる「碑林」：林内には、明代の李東陽、厳嵩、清代の翁方綱、何紹基、康有為など、歴史上の有名な書家や文人が書いた墓碑が数多く立ち並び、一種の露天博物館とも言える景観を作り出しています。書道に興味のある方にはたまらないスポットです。
歴史的人物の墓所：『桃花扇』で知られる清代の劇作家、孔尚任の墓や、最後の「衍聖公」である孔徳成の父、孔令貽の墓など、歴史教科書に登場する人物の墓を実際に訪れることができます。広大な林内を散策しながら、歴史のロマンを感じることができます。

入場料：
孔林単独の入場料は、季節や購入方法により変動します。おおむね50元前後です。
よりお得なのは、「三孔」と呼ばれる孔廟、孔府、孔林の共通入場券（聯票）を購入する方法です。聯票の価格は140元から185元の範囲で設定されている場合があります。
学生（学生証提示）、60歳以上の高齢者（身分証提示）などは割引対象となります。詳細な料金と優待政策は、訪問時に公式情報でご確認ください。孔林(kǒng lín)通年営業していますが、季節や祝日により閉園時間が変わります。
ハイシーズン（ゴールデンウィーク、国慶節などの大型連休期間）： 8:00 ～ 17:30 （最終入場は閉園時間の30分前までを目安にしてください）。
ローシーズン（上記以外の通常期）： 8:30 ～ 17:00 （最終入場は閉園時間の30分前までを目安にしてください）。
※ 混雑状況や特別な行事により、時間が変更される可能性があります。住所：
山東省済寧市曲阜市鼓楼北街18号。
公共交通機関：
曲阜東駅（高速鉄道駅）からお越しの場合：駅前広場からK01路バスに乗車し、「南門」バス停で下車します。そこが孔廟の正面入口です。孔廟・孔府を見学した後、孔府の北門（出口）から観光電瓶車（有料）に乗り換え、孔林まで向かうのが一般的なルートです。
曲阜駅（普通列車駅）または曲阜長距離バスターミナルからお越しの場合：2番、3番、5番バスなどに乗車し、「南門」バス停で下車します。
市内では、人力三轮車（三輪タクシー）を利用する方法もあります。孔孔林は孔子とそのご子孫が眠る神聖な墓地です。静粛を保ち、大声で騒いだり走り回ったりするのは避け、故人への敬意を払いましょう。
林内には国宝級の石碑や石像が数多くあります。これらに触れたり、登ったり、落書きをしたりすることは絶対にやめましょう。文化財保護の観点からも、マナーを守ることが大切です。
敷地面積が非常に広大です（一周するだけで約2時間かかります）。すべてを徒歩で回るのは体力を要しますので、園内の観光電瓶車（有料）を利用することをお勧めします。歩きやすい靴で訪れましょう。
林内は木々が生い茂っているため、夏季は蚊や虫が多く発生します。虫除けスプレーを持参することをお勧めします。また、日陰が多いとはいえ、夏季は熱中症対策として水分補給を忘れずに。
文化的背景を深く理解するために、入口で音声ガイドを借りるか、正規のガイドを依頼するのが良いでしょう。特に混雑する連休期間中は、孔廟・孔府の入場に事前予約が必要な場合がありますので、計画を立てる際は最新情報をチェックしてください。