河南料理〔豫菜〕

概況：
豫菜（よさい）は、河南省を中心に発展した中国で最も歴史のある料理体系の一つで、「八大菜系の母」とも称されています。商代の名宰相で「厨聖」と尊ばれる伊尹（いいん）によって「五味調和説」が提唱され、3600年以上にわたって「五味調和、質味適中」（五つの味を調和させ、質と味を適切に保つ）という基本理念が受け継がれてきました。豫菜は東洋の哲学的思考を体現し、酸味、甘味、塩味、辛味を過度に偏らせず、東西南北の特徴を融合させた中庸の味わいが最大の特徴です。北宋の首都・開封を中心に発展し、周代の「八珍」、唐代の宮廷料理、そして宋代の市井の美食まで、中国料理の基盤を形成してきました。特に洛陽の「水席」（24品の湯物中心のコース料理）は、中国唯一の女帝・則天武后も賞賛したと伝えられる、汁物が多く水分補給にも適した宴席として知られています。

見所：
鯉魚焙麵（りぎょばいめん）は、糖醋酢のソースで軟らかく煮込んだ黄河鯉魚と、カリッと揚げた極細麺を組み合わせた豫菜を代表する名品です。
開封の「套四宝（とうしほう）」は、鴨、鶏、鳩、ウズラの四種類の鳥類を骨を抜いて重ね合わせた、豫菜の技術の集大成ともいえる絶品料理です。
洛陽の「水席」（すいせき）は、24品の料理すべてに汁物がつく、千年以上の歴史を持つ宮廷宴です。前菜8品と湯菜16品で構成され、則天武后も愛好したとされています。
汴京烤鴨（べんきょうかおう）は、北京烤鴨のルーツとされる料理で、新鄭の枣の木を燃料として使い、外はカリッと中はジューシーに焼き上げます。
炸紫酥肉（さしそうにく）は、豚バラ肉を紫蘇の葉で香り付けし、鴨のようにカリッと揚げた「鴨に勝る」と称される名菜です。
湯料理の技術は豫菜の真骨頂であり、「酸辣烏魚蛋湯（さんらつうぎたんたん）」は墨魚の卵腺を使用した、ほどよい酸味と辛味が特徴の絶品スープです。
入場料：豫菜を体験できるレストランは、一般的な飲食店と同様に、注文した料理の代金がそのまま費用となります。高級レストランから気軽な大众食堂まで、予算に応じて様々な選択肢があります。河南料理（豫菜风味宴）(hé nán liào lǐ yù cài fēng wèi yàn)ハイシーズン：通常の営業時間（多くのレストランは昼食11:00-14:00、夕食17:00-21:00）
ローシーズン：通常の営業時間（大きな変動はありません）住所：河南省一帯（特に開封、洛陽、鄭州などの都市）
公共交通機関：
豫菜を楽しむには、開封、洛陽、鄭州などの主要都市にあるレストランや飲食店を訪れるのが便利です。各都市にはバスやタクシーなどの公共交通機関が充実しており、主要なレストランへは簡単にアクセスできます。また、開封の鼓楼夜市などの夜間市場も、本格的な豫菜の小吃を気軽に楽しめる場所として人気があります。豫菜は「五味調和」が基本ですので、提供される料理の味付けをまずはそのままお楽しみください。好みに応じてテーブル上の調味料で調整するのは、味わってからにするとよいでしょう。
洛陽の「水席」のようなコース料理は品数が多いため、食事にある程度時間をかける心構えがあると、よりゆっくり楽しめます。
夜市や大众食堂などでは、現地の活気ある雰囲気を楽しみながら、様々なメニューに挑戦してみるのもよい経験になります。
特に夏場は、水分を多く含む「水席」や汁物料理が、暑さによる食欲減退を防ぎ、体に優しいと感じられるでしょう。
豫菜には長い歴史と物語がある料理が多いため、現地のガイドや店員さんに料理にまつわる話を聞いてみると、より深く理解し、楽しむことができます。